クラフトビールは「小規模生産・高い独自性・職人技」という三本柱で大手ビールとは一線を画します。とりわけ日本では、地域の水質や季節の素材を活かした多彩なレシピが急増しニーズも毎年右肩上がりです。
本記事では、基本的かつ初歩的な醸造手順を網羅しつつ、解説していきます。
クラフトビールの作り方
初心者向けロードマップ

クラフトビールづくりは大きく9工程――「原料選定→粉砕→糖化→濾過・スパージング→煮沸とホッピング→急冷→一次発酵→熟成(二次発酵)→パッケージング」に整理できます。
本章では工程ごとの目的と最適条件をレシピ作成のヒントとともに解説します。
原料選びで味の8割が決まる
クラフトビールは原料の小さな違いがそのまま個性として表面化します。つまり「水・麦芽・ホップ・酵母」のマッチングを制した者が味を制するのです。
水質とミネラルバランスの最適化がカギ
ビールの約90%は水。軟水はよりビールを飲みやすいものにし、硬水はさまざまな成分が混ざり合うため、ローストモルトの酸味を中和させたり、ホップの香りを引き立てたり、口当たりをなめらかにしたりとさまざまなエフェクトが成分によって変わります。
日本の水道水は総じて軟水なので、代表的なピルスナーやペールエールに向きますが、スタウトを作りたい場合は重炭酸イオンは濃色麦芽の酸味のバランスを整えるために必要であり、硬度調整を行うと良好な結果が得られます。
麦芽の種類と粉砕度のベストなバランス
ベースモルトはピルスナーやペールエールなら淡色麦芽を70〜90%、アンバーやブラウンなら濃色麦芽を増やし、バーレーワインなら全体的なモルト量をふやします。
粉砕度は「中心部は細かく・殻は砕きすぎない」粗挽き寄りを推奨。穀皮が天然フィルターとなり、後段の濾過効率を上げつつ渋味を抑えます。
モルトの粉砕はハスク(一番荒い)・グリッツ(中粒)・フラワー(粉)の3種類にわけられます。これらの比率を1:8:1にしたり、2:7:1にしたりします。これはブルワリーによって異なります。
ホップ品種と投入タイミングの早見表
苦味用(例:マグナム、チヌーク)は煮沸開始直後に投入しIBU(苦味指数)を稼ぎます。 こられらのビタリング用ホップの特徴は苦味を出すアルファー酸を多く持っている品種です。
フレーバー用(例:カスケード、センテニアル)は煮沸残り20分前後、アロマ用(例:シトラ、モザイク)は煮沸終了0〜5分前または火を止めてから投入します。
さらに一次発酵終了前後にホップを漬け込む“ドライホッピング”でトロピカル香を層状に重ねるとIPAなどのホップが効いたスタイルには欠かせません。
仕込み工程│糖化・濾過・スパージング
糖化(マッシング)では麦芽のデンプンを酵素の力で麦汁中に糖として溶かし込みます。pH5.2〜5.6の範囲で効率的に麦芽についている酵素が動き活性が高まります。
61度〜76度までの温度の中で澱粉が糖分に分解されます。温度によって分解される大きさが異なり、最終的なビールの味わいに影響していきます。
濾過層(ロイタータン)ではグレインベッド(穀皮の層)を乱さないよう慎重に麦汁を引き抜き、78 ℃前後の仕込み水を穏やかに掛け流す「スパージング」で残存糖を余すことなく回収します。
βアミラーゼ優位(60度〜69度)でドライな仕上がり
この温度域は麦芽由来βアミラーゼが最大活性を示し、短鎖糖=発酵性の高いマルトース主体に分解されます。最終比重が低く、シャープでキレ味のよいピルスナーやセッションIPA向きです。
αアミラーゼ優位(70〜76度)でフルボディに
αアミラーゼはデキストリン(長鎖糖)を生成するため、発酵後も残糖が多く口当たりに厚みが生まれます。
バーレーワインやダブルIPAなどアルコール度数の高いスタイル、大麦以外のオーツ麦を使うヘイジーIPAではこの温度を採用し、甘さを残すこともあります。
煮沸とホッピングで香りをレイヤリング
煮沸は雑菌殺菌とDMS(青臭い硫黄系オフフレーバー)の飛散を兼ねる一方、ホップ添加で苦味・香りを設計する重要工程です。
苦味ホップでIBUをコントロール
60〜90分煮沸の前半に添加する苦味ホップはα酸含量が高い品種を選ぶと効率的。IBU=15〜25ならゴールデンエールの軽快な苦味、IBU=40以上ならアメリカンIPA並のしっかりした苦味に仕上がります。

アロマホップ&ドライホッピングの極意
アロマホップは熱揮発しやすいテルペンを保持するため、煮沸終了直後に投入し10分程度のステップで香りを付与します。 ドライホップは一次発酵終盤(比重1.020付近)か発酵完了後に2日から10日間漬け込み、酸素を避けつつタンクを軽く攪拌すると高い抽出効率が得られます。
急冷・一次発酵・温度管理
煮沸後の麦汁はプレートチラーで20 ℃前後(エール)または10 ℃前後(ラガー)まで一気に冷却。酵母に必要な酸素を麦汁に溶けこませます。 次いで麦汁1mLあたり75〜150万細胞程度の酵母をピッチし、温度帯を厳守して一次発酵をスタートさせます。
エール酵母 vs ラガー酵母の最適温度
エール酵母(Saccharomyces cerevisiae)は18〜22 ℃で華やかなエステルと柑橘香を生成。対してラガー酵母(S. pastorianus)は9〜15 ℃でクリアな味わいとキレを演出します。狙いのスタイルに合わせて温度を決定しましょう。


発酵トラブルとリカバリー法
活動が鈍い場合は酵母栄養源(DAPやジンク)を添加し、軽く撹拌して溶存酸素を1ppm以下に保ちます。
二次発酵・熟成・パッケージング
一次発酵終了後、澱上げして2〜4 ℃の低温でラガリングを2〜3週間行うと、酵母が凝集しクリーンな味に。
瓶内2次発酵は1 Lあたり3.5〜4.5 gの糖と極少量の再活性酵母を加え、20 ℃で一週間のボトルコンディショニングを行えば自然発泡と炭酸のキープが可能です。
ボトルコンディショニングの手順
- カーボネーションシュガーを70 ℃で溶解→滅菌
- 溶液をプライミングタンクで麦酒と均一混合
- 酵母スラリーを10mL/20 L追加――この順序で酸化や充填ムラを回避できます。
酸化を防ぐ充填テクニック
瓶や缶は二酸化炭素パージで酸素を追い出し、ヘッドスペースを最小化。充填後は速やかに王冠・シーマに密封し、DO(溶存酸素)100ppb以下を目指します。
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クラフトビール醸造の法規制と設備ガイド

アルコール度数1%超のビールを合法的に造るには「酒類製造免許」が必須です。また製造場ごとの年間最低製造量(ビールの場合は60 kL)要件があり、現実的にはマイクロブルワリー規模でないと取得は困難です。
日本の酒税法と免許要件を理解する
ビール(麦芽比率50%以上)は酒税法上「ビール類」に区分され、1%以上のアルコールを含むと個人消費目的であっても製造免許が必須です。
アルコール1%未満/1%以上の分岐点
酒税法で「酒類」とみなされるのはアルコール分1度以上の飲料。したがって1%未満なら免許不要の清涼飲料水扱い、1%以上は免許取得義務が発生します。試作や教育目的でも例外はありません。
申請〜許可取得までの流れ
①製造場所の確定→②税務署へ事前相談→③事業計画・製造設備図面・財務状況を添付して申請→④審査(4〜6か月)→⑤免許交付→⑥製造開始。なお発泡免許は最低製造量が引き下げられる特例がなく、資本体力がポイントです。
必要機材・コスト・スペースを見積もる
初心者でも仕込める容量を踏まえるといかが目安となります。
初心者向けスターターキット一覧
麦芽エキス缶+ドライホップ+イースト+バケツ型発酵容器がセットになった1〜4 gal(4〜15 L)キットは1万円前後。楽天や専門店などで簡単に入手できます
ステンレス製発酵タンクの選び方
小規模業務用なら30〜60 Lのコニカルタンクが主流。ダブルジャケット(冷媒循環)付きモデルは温度管理が格段に容易で、サニタリーバルブ付きなら澱抜き・清掃も短時間で完了します。予算は1基20〜40万円が目安です。
よくある失敗とプロの改善テクニック

醸造初心者の9割が一度は遭遇するのが「オフフレーバー」と「発酵停止」。原因を突き止め、適切な対策を講じれば再現性の高い仕込みへ近づけます。
オフフレーバー別チェックリスト
DMS(蒸れたコーン臭)の抑制策
若煮沸や急冷不足で麦芽由来SMMがDMSに変性しやすくなります。90分以上のフルボイルと0 ℃近辺までの急冷で再発を防げます。
エステル過多・クローブ臭の原因と対策
高温発酵と栄養不足が主因。酵母の健全度を事前にイーストスラントで確認し、18 ℃以上の温度ピークを避ければ華やかさとクリーンさのバランスが取れます。
発酵が止まったときの応急処置
- 温度再調整:比重変化が止まったら、設定温度を2 ℃上げて24時間様子を見る。酵母が再活性化しやすい。
- 酸素・栄養補給:撹拌は最小限に、純酸素または無菌エアで0.5 ppm前後の酸素を軽く供給し、DAPや亜鉛を添加して酵母疲弊を回復させる。
- 比重測定とpH確認:終端比重の見込み(例:1.012)との差と、pH 4.0〜4.5の範囲をチェック。pHが上がりすぎていれば乳酸で微調整。
- 再ピッチ:改善しない場合は、健全なスターター(同系統酵母を比重1.020の麦汁で前日培養)を仕込み量の0.5〜1 %添加。添加後はエアロックを確認し、24時間以内に発泡が再開すれば成功。
- 二次汚染の見極め:酸味や薬品臭が急増したら乳酸菌・野生酵母汚染の可能性があり、無理に延命せず廃棄判断も重要です。
温度再調整と酵母再ピッチの手順
- 発酵温度を2 ℃上げつつ24時間観察
- 比重が変化しなければ健全な酵母スターターを麦汁の0.5〜1%量で再ピッチ
- 酸素の過剰混入を避けるため静かに撹拌。
この三段階で大半の停滞は解消します。
まとめ│自家醸造で世界に一つのクラフトビールを楽しもう
クラフトビールづくりは科学とアートの融合です。原料選定から温度管理、法規制や設備計画に至るまで一貫した理解があれば、再現性の高いビールが造れます。
Repubrewでは、こだわりの原材料をふんだんに使用した個性豊かなビールを数多くラインナップしています。 クラフトビール初心者の方から玄人まで、きっと満足できること間違いなし!
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