熱処理はクラフトビールの風味を損なうって本当?その理由や熱処理の原理についてブルワリーが徹底解説!

クラフトビールの醸造過程において、発酵が終わった後の品質管理は非常に重要です。なかでも「熱処理(パストリゼーション)」は、古くから飲料業界で用いられる基本的かつ効果的な技術で、ビールにおいてもその役割は大きいものがあります。熱処理を施すことで、酵母や雑菌の活動を停止させ、長期保存を可能にしつつ、消費者に常に一定の味わいを届けることができます。

一方、クラフトビール愛好家の間では「熱処理は風味を損なう」という声も根強く、そのメリット・デメリットを正しく理解することが市場選びのカギとなります。

本記事では、ビール熱処理の基本から具体的手法、非熱処理ビール(生ビール)との比較、化学的な影響、市場動向までを幅広く解説します。

目次

ビールの熱処理とは何か?
パストリゼーションの基本

ビール熱処理は、60〜80℃程度の低温で一定時間加熱し、酵母や雑菌を不活性化して品質を安定化させる技術です。名前の由来は19世紀の科学者ルイ・パスツールに端を発し、乳製品やワイン、ジュースなどでも広く活用されています。

ビールに熱処理を施す目的は大きく分けて「過発酵の防止」「微生物の殺菌」「長期保存性の確保」の3点に集約され、消費者へ一貫した味わいを届けるうえで欠かせない工程となっています。

パストリゼーション(パストチャライゼーション)の定義

パストリゼーションとは、微生物の生存に必要な温度を一時的に超える程度の熱を与え、食品や飲料に残る病原菌や腐敗菌を不活性化する技術です。

高温短時間(HTST)方式や低温長時間方式など、対象物や目的に応じて複数のバリエーションがあります。ビールにおいては、風味を損なわないための最適な温度・時間を慎重に設定する必要があります。

処理温度と時間の目安(60〜70℃×20〜30分)

  • 60℃前後(低温長時間):揮発性香気成分をできるだけ残しつつ、酵母の活動を確実に停止させる。
  • 65〜70℃前後(中温中時間):微生物殺菌力を高めるが、香味成分の一部損失リスクも増大。
  • 20〜30分間の保持:容器内部まで均一に熱を行き渡らせるための目安。短すぎると効果が不十分、長すぎると風味変化を招く。(上記のように温度が高ければ短い時間で温度が低いと長い時間で保持しなければなりません。)

ビール熱処理の目的とメリット

ビール熱処理の導入により得られる主要なメリットは以下の通りです。

酵母活動の停止による過発酵防止

発酵後にもボトル内に残る生きた酵母は、時間経過とともに発酵を再開し、瓶内圧の変動や味のぶれを引き起こします。 熱処理を行うことで、こうした過発酵リスクを根本から排除できます。

微生物殺菌による品質の長期安定化

酸敗(味の酸化)やオフフレーバーの原因となる雑菌を死滅させ、長期保存時の味や香りの劣化を抑制します。 賞味期限が6ヶ月〜1年程度と大幅に延びるため、遠隔地流通や在庫管理の自由度が高まります。

保存性向上による流通コスト削減

熱処理ビールは常温での流通・保管が可能なため、冷蔵保管コストや輸送時の温度管理コストを削減できます。 これにより、小売店や飲食店は在庫リスクを抑えつつ、安定供給を図れます。

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ビール熱処理の主要な手法

ビールのパストリゼーションには、主に「トンネル・パストリゼーション」と「フラッシュ・パストリゼーション」の2つの方式があります。

それぞれの手法ごとに特徴と適用シーンが異なるため、自社の生産規模やブランド戦略に合わせた選択が求められます。

トンネル・パストリゼーション

完成した瓶や缶をそのままコンベアでトンネル状の加熱機械に通し、段階加熱・保持・冷却を行う方式です。

容器ごと加熱するフロー

  1. 予熱ゾーン:常温から徐々に温度を上昇(約40〜50℃)
  2. 加熱ゾーン:60〜70℃で20〜30分間保持
  3. 冷却ゾーン:常温または水冷で急速に温度を下げる
  4. 品質検査:温度・保持時間をモニタリングし、基準逸脱時はアラート発報

メリット/デメリット

  • メリット:容器内での二次汚染リスクを完全排除 – 設備コストが比較的低く、中小規模ブルワリーでも導入しやすい -殺菌が強く、一番確実
  • デメリット:処理時間が長く、生産ラインのボトルネックになりやすい – エネルギー消費量が多く、ランニングコストが高い

フラッシュ・パストリゼーション

瓶詰め前のビールをプレート式やチューブ式の熱交換器で瞬間加熱し、即座に冷却する方式です。短時間高温処理(HTST: High Temperature Short Time)とも呼ばれます。

短時間高温処理の仕組み

  1. 加熱部:高熱プレート間を通過させ、数秒〜数十秒で70〜80℃に加熱
  2. 冷却部:直後にシェル&チューブ式熱交換器で即座に冷却(常温付近まで)
  3. ボトリング:無菌状態で充填・キャップ打栓

風味への影響と事前・事後の管理ポイント

  • 風味影響:加熱時間が短いため、揮発性ホップ香やフレーバー成分の損失が最小限に抑えられる
  • 管理ポイント:無菌充填ラインの整備・CIP(洗浄)手順の徹底

熱処理ビールと
非熱処理ビール(生ビール)の徹底比較

ビール市場には「一般向けの熱処理ビール」と「クラフト系の生ビール」という2大潮流があります。両者の違いを風味/品質/流通面から詳しく見ていきましょう。

生ビールに関してはこちらもご覧ください。

風味の違い

  • 熱処理ビール:イソα酸が加熱により口中での苦味を強調し、厚みのあるコクを感じやすい。
  • 生ビール(クラフトビール):酵母由来のエステル香やホップの繊細なアロマが生き生きと立ち上がるため、フレッシュで軽快な味わいが特徴。

品質安定性と賞味期限の比較

  • 熱処理ビール:常温保管可能、賞味期限6ヶ月〜1年程度。
  • 非熱処理ビール:冷蔵管理必須、賞味期限1〜3ヶ月程度。

大手の熱処理ビールと非熱処理クラフトビールの違い

大手メーカーと小規模クラフトブルワリーのビールがどう異なるか、代表的な銘柄で比較します。

熱処理された大手ラガー系ビール

  • キリン クラシックラガー:厚みのある苦味と米由来のすっきりした後味が特徴。
  • サッポロ ラガー(赤星):伝統的な製法を踏襲しつつ、長期保存でも劣化しにくい。

非熱処理のクラフトビール

  • 小規模ブルワリー各社の生ビール:瓶内二次発酵や無濾過特有のフルーティさを追求。
  • シーズナル限定品やIPAなど、個性的なホップ感を活かしたスタイルが多い。

ビール熱処理が風味と化学成分に与える影響

加熱による化学的な変化を理解することで、熱処理ビールの味わいをより深く楽しめます。

苦味成分と厚みの変化メカニズム

ホップ由来のイソα酸は加熱で溶解度が変化し、口中での解離速度が遅くなることで、豊かな苦味の持続感が得られます。この“後口の厚み”が熱処理ビールの大きな魅力です。

揮発性成分の損失と香りの調整

モノテルペンアルコールや酢酸イソアミルなどの揮発性化合物は高温で揮発しやすいため、処理前後に追加ホップ投入や香り成分の補強が行われることがあります。

香りのバランスを保つためのブルワリー独自のノウハウが光る部分です。

酸化促進・タンパク質変性の化学的視点

  • 酸化促進:加熱によって酸化反応が進行しやすくなり、“古香(トースティ、カラメル香)”が微量発生する。
  • タンパク質変性:加熱によりビール中のタンパク質が変性し、泡持ちや口当たりのテクスチャーに変化をもたらします。

現代ビール製造における熱処理の役割

技術革新と消費者嗜好の変化により、熱処理ビールの位置づけも進化を続けています。

ろ過・無菌充填技術とのハイブリッド運用

クロスフローろ過やナノフィルトレーションといった先進的フィルトレーション技術と、必要最小限のパストリゼーションを組み合わせることで、品質を維持しつつ風味へのダメージを最小化するハイブリッド運用が注目されています。

消費者ニーズ別の熱処理ビール選び方

  • コスト重視派:長期保存が可能な大手熱処理ビールで安定供給を確保。
  • 風味重視派:非熱処理クラフトビールやハイブリッド処理品で鮮烈なホップアロマを堪能。
  • バランス派:ライトパストリゼーションや短時間処理でほどよいフレッシュ感と常温流通性を両立。

まとめ

ビール熱処理は、発酵完了後の品質管理として古くから用いられる確立技術であり、現代でも多くの大手メーカーや各種ブルワリーで採用されています。

トンネル・パストリゼーションとフラッシュ・パストリゼーションという二つの方式にはそれぞれ特徴があり、ろ過や無菌充填技術と組み合わせることで、さらなる品質向上とコスト効率化が可能です。

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