ラガー作りに欠かせない下面発酵とは?その特徴やメカニズムを現役ブルワリーが解説!

下面発酵(ラガー)は、酵母の発酵が進むにつれてタンク底部へ沈降し、5〜13℃の低温で8〜12日間以上の発酵と冷蔵熟成(ラガリング)を行う醸造法です。

ラガーリング(lagering)とは、低温熟成の形態で、発酵終了後の熟成工程で0℃に近い温度で周週間から数ヶ月熟成期間をとることをいい、下面発酵のラガータイプにだけ使用されます。

近年では、温度を段階的に上げる「ファストラガー(カリフォルニアコモン)」技術で熟成期間を短縮しつつ品質を保持する手法が広まりました。

これは温度をエールと同等の高温で仕上げることで、ラガーのようなキレとエールのような香りが特徴のビールを作れる技術で、2000年頃に開発されました。その後もセッションラガーやサワーラガー、IPL、イタリアンピルスなどなど多彩なスタイルがあります。

目次

下面発酵とは?
概要とそのメリット

下面発酵が他の醸造法と一線を画すのは、ラガー酵母のキレが出ること。(ただ副産物を熟成期間でしっかりと取り除くために長時間熟成が必要) これにより出来上がるビールは、清涼感ある喉ごしと麦芽・ホップ本来の純粋な香味が特徴です。本節では、そのメカニズムと得られるメリットを詳しく見ていきます。

下面発酵の定義

下面発酵は、ラガー酵母(Saccharomyces pastorianus)が比較的低温で発酵し、発酵後半には活性が低下した酵母がタンク底部に沈降する特性を利用した醸造法です。

エール酵母とは異なり、発酵中に泡の上部に浮かぶことなく液底に沈むため「底面発酵」とも呼ばれます。

沈降した酵母と麦汁が分離することで、酵母由来のエステルやフェノールなどの副産物が極力抑えられ、クリアで雑味の少ないビールが作れます。

低温長期発酵の特徴

下面発酵の最大のポイントは、5〜13℃という低温環境で8〜12日間以上かけてゆっくりと発酵を進めることです。この低温発酵により、以下のようなメリットが得られます。

  • 風味のクリアさ:発酵速度が遅いため、フルーティーなエステル生成が最小限に抑えられ、麦芽やホップ本来の香味が引き立つ。
  • 雑味の抑制:雑菌の繁殖リスクが低く、アセトアルデヒドなどの不快な副産物も除去しやすい。
  • 長期保存性:低温での熟成が長くなり、タンパク質やポリフェノールの沈降が進むため、長期保存や輸送に耐える安定性が高まる。

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下面発酵(底面発酵)の歴史と進化

下面発酵が生まれた背景には、寒冷な気候を利用した貯蔵洞の存在と、科学者たちによる酵母研究の発展があります。本節では、14世紀から19世紀にかけての主要なラガー作りについてのイベントを追い、その歴史を辿ります。

14世紀ニュルンベルクでの起源

下面発酵の歴史は14世紀のバイエルン地方に遡ります。当時、夏の高温を避けるため、洞窟や岩塩坑など温度が一定に保たれる貯蔵洞(ラガー洞)を利用して発酵と熟成を行っていました。

冬季に収穫したホップを用い、天然の氷で冷却した地下室での醸造が「ラガー」の語源となりました。

ラガー酵母の発見と培養

ビール醸造の歴史において当初より使用されていたエール酵母Saccharomyces cerevisiaeと、南米パタゴニアの森に生育するブナの葉より発見されたSaccharomyces eubayanusと呼ばれる酵母が掛け合わさって誕生した、下面発酵酵母はSaccharomyces pastorianusと名付けられました。

さらに1883年には、カールスバーグ醸造所のエミール・ハンセンが底面発酵酵母の純粋培養技術を確立。これにより酵母株の品質管理が可能となり、安定したラガービール生産の基盤が築かれました。

下面発酵の工程と
ラガーリングまでの流れ

下面発酵ビールを完成させるまでには、一次発酵と冷蔵熟成(ラガーリング)の2つの大きなステップがあります。

それぞれの目的・工程・管理ポイントを押さえれば、ホームブリューイング(自宅醸造)からクラフトビール醸造所まで応用可能です。

一次発酵:温度設定と期間

一次発酵は5〜13℃に厳密に温度管理し、レシピによって違いはあるものの、10℃で7〜12日間発酵させることが一般的。 低温では酵母の代謝が穏やかになり、ゆっくりと糖分がアルコールと炭酸ガスに変換されます。

発酵後期に酵母はタンク底部へ沈降し、発酵が終了するとビールになり、少しの濁りはあるものの、比較的透明度が出てきます。

冷蔵熟成(ラガーリング)の意義

一次発酵後、0〜2℃の環境で2〜6週間程度熟成させる工程をラガーリングと呼びます。この期間中に酵母やタンパク質、ポリフェノールなどがゆっくりと沈澱し、ビールに青リンゴのような風味を与えるアセトアルデヒドも20%から70%減少します。 その結果、味わいが滑らかになり、切れの良い喉ごしが生まれます。

下面発酵ビールの代表的なスタイルまとめ

下面発酵ビールは世界各地で独自の進化を遂げ、多彩なスタイルが生まれています。ここでは代表的なものをご紹介し、味わいの違いや特徴を解説します。

ピルスナーとヘレス

  • ピルスナー:1842年にボヘミア地方のプルゼニ(ピルゼン)で誕生した淡色ラガー。爽快なホップの苦味が特徴で、黄金色に輝くクリアなボディが世界中で愛されています。
  • ヘレス:19世紀後半にミュンヘンで開発された淡色ラガー。ホップは抑えめにし、ふくよかなモルトの甘みとまろやかな口当たりを重視したマイルドなスタイルです。

ドルトムンダーとボック

  • ドルトムンダー:19世紀末にプロイセンのドルトムントで生まれラガー。ピルスナーよりもモルト感が強く、程よい苦味とドライな後口が絶妙なバランスです。
  • ボック:ドイツ語で「オスヤギ」を意味し、オスヤギのように元気になる姿から言われたことや、オスヤギのラベルが多く使用されています。アルコール度数が6.3〜7.2%と高め。モルトのリッチな甘みとキャラメルのような香ばしさが楽しめます。
  • ドッペルボック:ボックの上位スタイルで、さらに濃厚なモルト風味と高アルコール度数(7.5~10%)を誇る贅沢なビールです。

クラフトビールにおける
下面発酵の最新トレンドとは?

従来の大手醸造所だけでなく、クラフトシーンでも下面発酵ビールは重要な位置を占めています。ここでは最新トレンドと注目の試みをご紹介します。

カリフォルニアコモンの革新

少し前に注目され、アメリカの西海岸のクラフトビールシーンで活躍したカリフォルニアコモン。伝統的なラガーの風味を持ちながら熟成期間の短縮と酵母のエステル香が強く出てた手法になります。

例えば、発酵初期から50%完了時に13℃、75%完了時に17℃、90%完了時に19℃へ温度を引き上げ、その後短期間のラガーリングで仕上げます。

これにより、大規模設備がないクラフト醸造所でも効率的に下面発酵ビールを製造できるようになりました。

IPL(セッションラガー)の復権

IPL(インディアペールラガー)IPAのようにホップをラガーに入れてホップの香りが強く、フルーティーなラガービール。アルコール度数はIPA同様6%台が多いです。

長時間の飲用でも疲れにくい軽快さが、ビールフェスティバルやビアガーデンで人気を博し、再注目されています。

サワーラガーなど実験的スタイル

伝統的なラガーのクリーンさに乳酸発酵やフルーツを組み合わせた「サワーラガー」も登場。

乳酸菌由来の軽やかな酸味とラガー酵母のクリアなベースが融合し、従来のラガーにはない複雑で爽快な味わいを生み出しています。

まとめ

下面発酵は、低温での長期発酵と熟成によって雑味を抑え、麦芽とホップ本来の繊細な風味を引き立たせる醸造法です。 ピルスナーからボック、そしてクラフトシーンで注目のIPLやサワーラガーまで、下面発酵ビールのバリエーションは多彩です。

クリアな味わいと切れの良さを楽しみたいビールファンは、ぜひ下面発酵ビールの世界に足を踏み入れてみてください。

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