黄金色から漆黒、クリアから濁りまで、クラフトビールの色はモルトの焙煎度合いや配合比率、水質、糖化・煮沸、SRM/EBC測定で決まります。その仕組みを完全かつ分かりやすく解説し、醸造家の色調設計ポイントも紹介。
初心者から愛好家まで役立つ一読必見ガイドです!
クラフトビールの色は
どうやって決まるのか?

クラフトビールを選ぶとき、色はまず目に飛び込んでくる重要な要素です。黄金色に輝くラガーから、深い黒色を帯びたスタウトまで、その多彩な色合いはどのようにして生まれているのでしょうか。
本記事では原料から工程、科学的測定法まで詳しく解説します。
また、色は単なる見た目以上に、使用されたモルトの焙煎度や水質、醸造技術のヒントを与えてくれます。ビールの色調を理解することで、テイスティングやペアリングの楽しみが格段に深まることでしょう。
1. モルト(麦芽)の色と焙煎度合いが鍵
クラフトビールの色を決定づける最も大きな要因は、モルト(麦芽)の種類と焙煎度合いです。麦芽は大麦を発芽させ乾燥させたもので、その乾燥過程や焙煎方法によって、色素となるメラノイジンやカラメル化生成物の量や、焦げ感が変化します。以下で代表的なモルトの特徴を見ていきましょう。
1-1. ベースモルト:淡い黄金色のベース
ベースモルトのピルスナーモルトやペールエールモルトは低温(約50〜84度℃)で短時間乾燥させた淡色麦芽で、IBUが低いビールやピルスナーなど淡色ビールの基礎となります。メラノイジンの生成が少ないため、ほのかな麦芽香とクリアな黄金色を保ちます。
家庭用のLovibond(ラビボンド)スケールで約1.5〜2.5°Lの色合いを示し、ビールの透過光を通すと麦わら色が際立つのが特徴です。
さらに、ヴィエナモルトやミュンヘンモルトのように中間的な焙煎度合いを持つモルトも存在し、淡色〜濃色のグラデーションを滑らかに調整できます。これらを組み合わせたり100%で使用することで、独自の色合いと風味バランスを設計しています。
1-2. カラメルモルト・チョコレートモルト:赤褐色~褐色への変化
中程度の温度・時間で焙煎されたカラメルモルトは、赤褐色から琥珀色のニュアンスを与えます。さらに長時間、やや高温で焙煎するとチョコレートモルトになり、カラメル香やチョコレートのような香ばしさを演出し、ビールに深みをもたらします。
カラメルモルトは約10〜20°L、チョコレートモルトは約350°Lと、微量でも顕著に色を濃くします。
1-3. ブラックモルト:黒ビールを生む最強焙煎
ブラックモルトは高温でしっかりと焙煎された濃色麦芽です。ほとんどの酵素活性を失うほど強く焙煎されるため、糖化には使わず、風味付けや色調整目的で少量加えます。黒ビール特有の漆黒の色合いとロースト香を生み出します。
Lovibondスケールでは約500°L以上に達し、ビールを飲む際のルックスに強烈なインパクトを与えます。
2. モルト配合比率で調整する色合い
単一のモルトだけでビールを仕込むことはほとんどありません。ベースモルトを主体に、カラメルモルトやブラックモルトなどスペシャリティモルトを少量ブレンドすることで、目的とする色味と風味のバランスを巧妙に調整します。
また、酵母によって残存糖の使われ方が変わるため、発酵後の色合いにもわずかながら差が生じます。同じ配合でも酵母系統を変えると、最終的な色味が少し変化する場合があります。
2-1. ベースモルトとスペシャリティモルトのバランス
淡色ビールではペールモルトが70〜90%を占め、残りに少量のカラメルモルト(5〜10%)、チョコレートモルト(1〜3%)を加えて色調や風味にアクセントをつけます。
黒ビールの場合も、ブラックモルトは全体の2〜5%程度に留めることで、底光りするようなコクとクリーミーな口当たりを実現します。
2-2. 酵素活性を保つための淡色モルト使用の理由
濃色麦芽のみで仕込むと、焙煎で失われたアミラーゼなどの酵素が不足し、麦汁の糖化が進まず発酵がうまく行えません。そのため、必ず淡色モルトをベースに用い、そこに濃色モルトを適量ブレンドする手法が一般的です。
実際の醸造試験では、淡色モルトを最低でも70%以上使用することで確実に糖化が進み、安定した仕込みが可能となることが確認されています。
3. 水質(硬度)がもたらす色のニュアンス
ビールの主成分である水も、色に影響を与えます。硬水と軟水では含まれるミネラル分が異なり、麦汁のpHやポリフェノールの溶出度合いに変化が起きるため、仕上がりの色調にも差が生じるのです。
醸造所ではしばしばカルシウム塩や硫酸カルシウムを添加して硬度を人工的に調整し、ビールの色や口当たりをコントロールします(バーレストネーションと呼ばれる技法)。
3-1. 硬水 vs 軟水:pHとポリフェノール溶出の影響
カルシウムやマグネシウム、重炭酸等のイオンが多くpHが高くなる傾向が多く、麦汁のpHをやや高めに保ちポリフェノールの酸化・結合を促します。その結果、色素が強く抽出されやすくなる傾向があります。
軟水はミネラル分が少ないため、淡い色合いのビールに適しています。 また、ポリフェノールは麦芽だけでなく、ホップからも抽出されることがあり、それによってビールの濁りに影響してきます。
3-2. 地域別ビール色の傾向(イギリス/チェコ・ドイツ/日本)
イギリスなど硬水地域では伝統的にエールやスタウトなど濃色ビールが発展しました。一方、チェコやドイツの軟水地域ではピルスナーなど淡色ビール文化が根づいています。日本の水質も軟水寄りで、クリアな淡色ビールに最適です。
例えばドイツのドルトムント産ビールは「ドルトムント・ハードウォーター」で知られ、苦味と色の濃さが特徴となっています。
4. 醸造工程が色に与えるもう一つの要因
麦汁の糖化後に行う煮沸工程でも色調は変化します。煮沸時の温度・時間によって、メイラード反応が進み麦汁がより褐色化するためです。
さらに、二段階糖化やデコクションマッシュ(麦汁の一部を煮出して再投入)などの伝統手法を用いると、モルト由来の色素がより凝縮され、独特の深い色合いを生み出します。
4-1. 糖化温度・時間による麦汁の色づき
糖化温度が高いほど、麦芽中のタンパク質と還元糖が反応しやすくなります。また、糖化時間が長くなると、わずかながら色素が増加し、ビール本来の色味が深まります。
4-2. 煮沸中のメイラード反応が生む褐色化
煮沸時間を長く取ると、メイラード反応が活発になり、麦汁は琥珀色から濃い褐色へと変化します。これによりビールはコクや風味を増す一方、色も濃くなりがちです。
5. 色を科学的に測る:SRM と EBC
見た目の印象だけでなく、ビールの色はSRMやEBCといった専門単位で定量的に評価されます。数値が高いほど濃色を示します。
測定には分光光度計を用い、430nm付近の波長で麦汁やビールの透過度合いを測定します。ビール研究所や醸造所のラボでは、厳密な色管理が日々行われています。
5-1. SRM(Standard Reference Method)とは
SRMはアメリカ発祥の色評価法で、ビールの透過光を測定し、色調を0〜40以上の数値で示します。2〜4は淡い麦わら色、30以上は黒色に相当します。
5-2. EBC(European Brewery Convention)とは
EBCはヨーロッパで一般的な評価法で、SRMよりも細かい分解能が特徴です。数値はSRMの約1.97倍となる換算式が使われます。
5-3. SRM⇔EBC換算方法と代表的数値
一般的な換算式は「EBC=SRM×1.97」「SRM=EBC×0.508」です。たとえば、SRM 6 は EBC 約12、SRM 40 は EBC 約79 に相当し、色の濃淡を正確に把握できます。
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色から読み解く
ビールスタイルと味わい

ここではクラフトビールの色と、その味わいの関係性について解説していきます。IBUとも関連してくるので興味がある方は下記も参照してください。

色味と苦味・香りの相関
一般に淡色ビールほど苦味(IBU)は低めで、ホップ香を生かした爽快感を重視します。一方濃色ビールは焙煎由来のロースト香やコクが強く、苦味とのバランスも厚みが増す傾向にあります。
また、色が濃いほどポリフェノールが多くでる場合があり、口当たりがリッチで重厚感が増すものが多いです。アルコール度数が高いスタイルと相性が良いことが多いです。
代表的なスタイル別:色見本ガイド
- ピルスナー(SRM 2–4)…淡い麦わら色
- ペールエール(SRM 5–7)…淡い黄金色
- アンバーエール(SRM 10–15)…琥珀色
- ポーター(SRM 20–30)…深い褐色
- スタウト(SRM 30+)…黒褐色
- ドゥンケル(SRM 10–18)…やや深い茶色
- シュバルツビア(SRM 25–35)…黒に近い褐色
各スタイルは色だけでなく、使用モルトや水質、酵母の特性にも由来するため、色見本はあくまで目安ですが、テイスティング時の指標として役立ちます。
クラフトビールの色をもっと楽しむコツ

ここからは美しい色合いのクラフトビールをもっと楽しむための豆知識やトピックなどを紹介していきます。
グラス選び&照明で変わる見え方
透明なチューリップ型グラスやテイスティンググラスを使い、自然光や少し暗めの照明下で見ると、色のグラデーションや輝きが際立ちます。ストレートなタンブラーよりも屈折が美しく映えます。
グラスは常に洗浄し、水滴や油膜を残さないようにすることで、色味を正確に観察できます。
色を手がかりにしたテイスティング法
色合いから「どの程度焙煎が効いているか」「ホップの苦味と香りのバランス」「濁っていれば、不純物や酵母が多いこと」などを予想し、味わいとの整合性を確認します。色を観察することで、ビールのレイヤーを深く理解できます。
さらに、グラスを傾けて厚みを観察したり、濁度や泡の残留具合からもビールのボディ感を推測できるため、色と一緒に複数の視覚的要素を組み合わせて楽しみましょう。
まとめ:ビールの色から広がる醸造世界
ビールの色は、モルトの種類・焙煎度合い、水質、醸造工程、そして科学的測定によって精緻に決まります。色からは原料や製法、味わいのヒントを得られるため、次にグラスを手にした時はぜひ色合いにも注目してみてください。
その一杯が、これまで以上に豊かな体験になることでしょう。
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